君を守りたくて②(鷹司正臣×ジル)

00.無機質な世界(鷹司正臣視点)
それは幼い頃からそうだった。
「あいつはいつも1番だ」
そう言われ続け、事実…俺は常に1番を手に入れていた。
…そう、例え望まない1番だとしても。
周囲からの期待に俺は苦労することなくこなした。
けれども、そんな人生にただぼんやりと思う。
ただ型に嵌る日々…鷹司家の人間として、求められるがままに生きていく…
嫌とは思わない。
異母兄弟である兄からの愛情を注がれて育ってきて、そんな兄の力になりたいとも思う。
けれど、ただそれだけ。
やりたいことも夢もない俺はただぼんやりと生きているだけ。
物欲もない俺は買い物もしない。
時々、大量に弟のために買いに行く兄を見送る。
俺にとって俺の取り巻く世界は酷く無機質に感じる。
絶望も感じないけれど、希望も感じない。
ただ息をするように日々を過ごしているだけ。
そんな彩りのない世界。
この世界に色が塗られることはきっとこの先もないだろう。
空虚に手を伸ばして、そんなことを感じた昼さがりだったーー