君を守りたくて④(鷹司正臣×ジル)

02.虐げられた彼女
兄からの説明に絶句した。
実の父親に殺されかけ、
預けられた施設では日常的に職員のサンドバッグになり、
やっと見つかった新たな家族に衰弱するまでに暴力を受けた。
そうしてやっとまともな俺の兄に拾われたということか。
ぼろぼろのシャツにジーパン。
そして、身体中には痣や切り傷が見え隠れした。
顔だけは受けていないところを見ると、今まで暴力を振るった男たちはそういった性癖なのだろう。
俺はさすがに不憫に思い兄を見遣ると、兄はにこやかに微笑み
「お名前、言えるかな?」
優しく話しかける兄に彼女は俯いたまま名を告げた。
「…ジル」
随分、変わった名前だと思った。
見た感じ、外人やハーフでもないようで、
とりあえず、俺は彼女の前に手を差し出し、挨拶をした。
「鷹司正臣だ、今日からよろしく」
首を傾げる彼女に俺は空いた片方の手で傷だらけの彼女の手を持ち上げ、握手をさせる。
「これが握手だよ。挨拶では大抵する作法だから」
そう俺が説明すれば、俺の手を握り返したので俺も握り返してみた。
これから長い付き合いになるであろう彼女と俺。
願わくば彼女が2度と虐げられないことを。
無機質な世界と血塗れた世界で生きていた俺とジルの共同生活が始まったーーーーーー