君を守りたくて③(鷹司正臣×ジル)

01.兄の気まぐれ
いつものように自室で読書に耽る。
夕食も終えて、いつもならいつ帰宅するか分からない兄が珍しく早くに帰ってきたことを知らされた。
兄は俺の自室に入ってくるなり開口一番ににこやかに俺に言い放った。
「拾いものをしたんだ、仲良くしてやってくれ」
兄の発言に俺は推測した。
拾いもの、仲良く…
要するに動物か何かでも飼うことにでもなったのだろうか…
兄は突然思い立って行動を起こすことが多々ある。
まぁ、その斬新な発想と他にはない行動力が藤城学園をあれほどに大きく、そして有名な学園になった所以ではないだろうか。
平凡でありきたりな理事長だったら平凡な学園だったかもしれない。
まぁ、普通の高校と違い行事ごとが半端なく多いので、学園の理事長である兄は常に多忙だ。
…だからだろう心配性な兄は自宅で1人で過ごす俺を気にかけた結果…と俺は思っていた。
実際に拾いものに対面した時に俺は微笑みは崩さず、兄に聞いてみた。
「兄さん?…これはどういうことか聞いてもいいのかな…?」
兄の気まぐれは今に始まったことではない。
拾いものをしたところで、なんら不思議には感じない。
…それが犬や猫、動物ならば。
俺が対面した兄の拾いものは間違うことなく、人間だった。
「もちろん。お前にも説明するつもりだからね」
優しく微笑む兄に俺は今度こそ深く溜息を漏らしたーー